2009年2月24日火曜日

パレスチナから報告します──占領地の住民となって

 2008年12月、イスラエルがガザに向かって空爆を始め、一週間後に予定通り、地上侵攻に切り替えて、狭くて人口の密集した地区を徹底的に破壊した。テロとの戦争との名目で、子供たちの手足を吹き飛ばし、負傷者を運ぶ救急車を狙撃し、治療にあたる医療者まで銃撃して殺した。
 その間、イスラエル人ジャーナリストのアミラ・ハスは、ガザ住民との連絡を絶やさず、実名入りで被害のようすを「ハアレツ紙」に書き続け、いまも書き続けている。

 その一部を「エスペランサの部屋」で訳出したのは、ほかでもない、この『パレスチナから報告します』(筑摩書房刊)を2005年5月に私が訳出したからだった。訳しながら、「そうだったのか!」と何度も思った。それまで、あまたの解説書では知り得なかった、まさに現場の事実を突きつけられたような思いがした。曇っていた視界がすっと開けた。
 イスラエル人に向けて書かれた新聞記事は、遠いアジアの国の読者にとって、そのままでは咀嚼しきれない要素もあったけれど、現場から発せられる声は圧倒的な重さをもって響いてくる。ジャーナリズムとはこういうものか、という目から鱗の瞬間も何度もあった。

 ところが2008年秋、この本は版元のカタログから落ちることになった。イスラエル/パレスチナを知るための基本図書ともいえる本だったのだが、本当に残念だ。まさかその年の暮れからガザ攻撃が始まるとは、思ってもみなかった。そしていまでは、古書でかろうじて入手できる状態。
 現代における「カッサンドラ」といわれるジャーナリストの、現場からの切実な声が伝わってくる、唯一の邦訳書だったのだけれど・・・。

 なんらかのかたちで復刻され、読者の手にいつでも入るかたちになることを、切に願っています!